戦争・東洋鬼
乗っていたボートのへさきに、イルカが遊びにやってきた。
「イルカ、ホラ、あそこ!」日本語で教えてくれたのは、韓国人の老夫婦。
「おじさん、日本語上手だね」軽い気持ちで問い掛けた私
「うん。おじさん、戦争のとき日本語しゃべらなきゃならなかったからサ」
・・・。
言葉を失う。
私の両親は戦争経験者だ。
旧日本軍が、アジア各国にしてきたことを聞かされて育ったつもりだった。
アタマではわかっていたつもりだったのに・・・・。
不用意に投げた質問に、自分自身を射貫いてしまった
おじさんは笑顔だった。
奥さんが持っていたピーナッツクッキーをくれた。
「ホラ、これ、オイシイよ。タベテミナ。」
心が塞ぐ
「私たち、戦争のときひどいことしてごめんなさい」
そんなことを口にすることこそ思いあがり、と叱られるかとも思ったが
言わずにいれば、自分が苦しい
おじさんとおばさん、笑顔。
「若い日本人はイイヒトたちヨ」
おばさんが近寄ってきて、私の背中をたたいてくれた。
ようやく私の視界にイルカの踊る、きらめく海が戻ってくる
イルカが背びれや背中をを見せるたびに私たちはしゃぎ、
イルカは何度となく、ボートが作る波とたわむれ
やがて尾ひれを高くあげて潜水し、海の中へ消えていった。
「若い日本人はイイヒトたちヨ」
・・おじさんのその一言に凝縮されるいろんな思い
今も私は愚直に考える
他人事でも、遠い昔のことでもない悲しい事実
2000/11/6 Central Australia