「ヒャンヒャンヒャンヒャン、う〜うう〜う〜、ヒャンヒャンヒャン!」


     ・・・うるさいなぁ・・・




ワタシはくたびれているんだよぅ、今日もいっぱい歩いたし、明日もいっぱい歩きたいし・・・。


ん〜・・寝かせてくれぇえぇぃ・・・
「ヒャンヒャンヒャンヒャンヒャン!ヒャンヒャンヒャン!ヒャンヒャンヒャン!」


む・・・

ようやくタダゴトではないサイレン音に不信を抱き、起きあがる。
夜中の一時半だ。

・・・にしては、さわがしすぎるじゃないか



階下をのぞきこむ。



うわッ
(イヤな予感)


消防車がいっぱい


消防士もいっぱい




・・・避難済みの宿泊客もいっぱい!



ど・・・どこ?
どこが火事?え?
どこのホテル?え?どこ?どこ?
嫌な予感とともに噴出す疑問



あたりを見まわす。
周りの建物から、火が出ている様子はない。




いや・・・周りの建物から、
人々が見ているのは・・・・・・・




このホテルだ(涙)





ゲ〜〜〜〜ッ!
(信じたくない)


な・・
(いやだ信じたくない)



なんと火事は・・まさか、このホテル???

(それは既にわかりきっているんだが現実逃避)




窓をあけ身を乗り出すと
下から消防士が
「早くおりてこ〜〜い!」



・・・私を呼んでいる(涙)



・・・夢じゃないんだ(泣)


昨日、ニュージーランド入りしたばっかりなのにぃいぃ!!!
これから、オーストラリャ〜に行って、ハワイにいって、アメリカ本土にいって、
それからそれから・・
まだまだ旅が始まったばっかりなのにぃいぃいぃいぃ!!!!



・・・・いや、この際そんなことはどうでもいいのだッ!
とにかく今、ここで焦げるワケにはいかんのだッッ!
マッハ1で気持ちをたてなおし


パスポートと航空券、大事なマシンをマッハ2で揃え、
煙の様子を確かめるべくマッハ3で
部屋のドアを少しだけ開ける・・・・・まだ煙はない。




・・・・が




いきなりしっかり閉じちゃってる防火扉(血涙)
宿泊客見殺し作戦、マッハ4にて実行済み





でぇええぇえええぇぇえいっっっっ!是非に及ばず!!!



こういうときは意外に度胸がすわっているもんで
タオルをぬらして口にくわえ、
(扉の向こうはきっとケムリ地獄と思ったの)
バッグを小脇にかかえ、貴重品は腰に巻き、防火扉めがけて体当たり!

ところが・・防火扉は スカ と開き、
勢いあまってころがるワタシ




・・・・ふっ


落ちついて考えて見ればアンタ、
防火扉にカギなんかかかっていたら


助かる命も助からんって。


・・・エイリアン対策じゃないんだから、防火扉というものは・・・
(どこが度胸がすわってるというんだ)


一瞬我にかえってアタマをポリポリしていたところを
「腰をぬかしたあわれなジャパニーズ」と勘違いしてくれた
老夫婦に助け起こされ、

みんなで一緒にヨロヨロと非常階段をかけ降りていきました・・・
(誤解をとくともっと恥ずかしいと思って真相はつげなかった)


途中のフロアでは、ガラス窓のむこうで消防士が消火活動の真っ最中!
モノホンの迫力はすさまじい!
それを見ちゃって足がすくんでしまった老夫婦の背中をたたきながら、
進め、進め!ヨタヨタヨタ、でロビーに到着、脱出成功・・・。


・・・・無事全員避難!

フロント前で待たされること数十分・・・
6月のニュージーランド。
南半球は、冬のはじまり・・・しかも南極に近いこの国、
冬の夜風が身にしみる・・。

あぁ
部屋、荷物・・・。

だいじょうぶかなぁ。
身の危険がすぎると、あれやこれやと心配のタネが増えるのが煩悩ってやつでして
部屋に残してきた荷物の心配がアタマをよぎる


ようやくサイレンが鳴り止み
「部屋にもどっていいぞ〜〜ぃ」妙にのんきな声とともに、
消防士さんたちが火元フロアからゾロゾロゾロ、と降りてくる・・ようやく一件落着!


幸いにも、ワタシの部屋は無傷だった。
ホテルもボヤですんで、被害はそんなには大きくなかったそうだ。







しかし一体ぜんたい、
到着早々、どうしてこうなるの!
ほんっと、信じられない!!!ナンデなの?!
・・・・などと嘆いたふりをしつつも
無事だった今となっては、
このアクシデントにほくそえんでいる「もう一人の自分」の存在を否めない・・・。


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